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「必要とあれば、あなたの私物を買うのにも、使ってください」
「……い、いや、それは」
「なにか、問題でも?」
確かに契約的とはいえ、結婚した。つまり、財布は共有してもおかしくはない……の、だろうが。
(さすがに、そんなものを預かるのは無理!)
落としたりしたら、普通に怖い……。
頬を引きつらせる芽惟に、敦也は「あぁ」と声を上げた。
「明細書は見ますけれど、別になにを買ったかまでは追求しませんが」
「そういうことじゃないです!」
本当に、敦也は芽惟を、女性をなんだと思っているのだろうか。
そう思ったから、芽惟はテーブルをバンっとたたいて立ち上がる。彼が、驚いたように目を瞬かせる。
「何度も言っていますが、私は贅沢がしたくて敦也さんと結婚したわけでは、ないです!」
真剣に彼の目を見て、訴えた。
「生活に必要なものは、やりくりします。なので、現金でください」
「……え」
「カードなんて、怖くて持てないです」
ゆるゆると首を横に振ってそう伝えれば、敦也は困ったような表情を浮かべた。が、しばらくして頷いてくれる。
「わかりました。……ただ、すぐには渡せないので。一時的に立て替えてくれますか?」
「はい、承知しております」
提案したのは芽惟なのだから、それくらいは当然だと言える。むしろ、これは昨日のうちに伝えておくべき事項だっただろう。
そういう意味では、芽惟の不手際だ。
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