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「……生活費は週ごとに。毎週月曜日にお渡しします」
そういう敦也だが、あまり納得がいっていないようだった。
多分ではあるが、彼は現金派ではなくキャッシュレス派なのだろう。だからこそ、芽惟の提案が予想外だったのだ。
「あとは、なにかありますか?」
敦也が芽惟に視線を向けて、そう問いかけてくる。
その問いかけに、芽惟は少し考えた。
「……今のところは、大丈夫かと。なにか必要があれば、その都度お話しますので」
夕食がいらないときは連絡をくれる。生活費は週に一度月曜日にもらえる。
今のところ、それがわかっていれば大丈夫だろう。買い物に行く場所などは、スマホで検索すれば出てくるだろうし。
「そうですか。では、今日の話し合いの場はこれで終わりということで」
「……はい」
そんな大層なものではないような気もしているが……。
心の中でそう思いつつも、芽惟は頷く。大層なものではなかろうが、彼にとってはそれほど重要なことだったということだ。
「そういうことで。ごちそうさまでした。まぁ、そこそこ美味しかったです」
席を立って、彼が芽惟を見てそう告げた。
その言葉に驚いてぼうっとする芽惟を他所に、敦也は部屋に引っ込んでいく。大方、出勤の準備をするのだろう。
(な、なんていうか、イメージとは違う……気が?)
冷徹な若社長なんて呼ばれているから、もっと血も涙もないような人かと思っていたのに。
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