第2章 同棲生活、始まります

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(……へたくそな料理)  メッセージに添付されていたのは、お世辞にも上手とは言えない料理だった。  父によれば、これは父が作ったものらしい。  多分芽惟がいなくても大丈夫……と伝えるつもりなのだろうが、これでは逆に心配になってしまう。 (まぁ、私が余計な口出しをするべきじゃないわね)  心配事を連ねるのもアリだとは思う。だが、どれだけ小言をぶつけても芽惟があの家に戻る可能性は低い。  だから、それとないアドバイスのメッセージを送った。すぐに返信が来る。  アドバイスのお礼。それから……芽惟はどうしているかという文章だった。 「こっちのことなんて心配しなくていいのに……」  愛のない結婚ではあるが、彼が悪い人ではないことは芽惟にもよくわかる。  でも、やはり娘を心配するのが親心というものだろう。そう思い、芽惟は適当に安心させるような文章を作って、送った。 「さて、買い物の準備準備っと……」  そう呟いて立ち上がった。 「……今日は一人みたいだし、お昼ご飯も夕ご飯も適当にしようっと」  敦也は苦労しない分の生活費をくれると言っている。多少は贅沢をすることだって可能なはず。  が、芽惟はどうしてもそんな気分にはなれなかった。 「贅沢をするのは、彼の役に立っているって実感してから。評価されてからのご褒美!」  今はまだなんの役にも立っていない。  それなのに贅沢なんて出来やしない。まさに、働かざるもの食うべからずだ。  そんなことを考えつつ、芽惟は部屋に鞄を取りに戻るのだった。
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