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そびえ立つ漆黒の城。
薄暗く見るものを圧倒するような佇まい。
その前に1人の男が立っている。
男は静かに思い返していた。
ここまでの道中色々なことがあった……ということはない。
すんなり来れた。
ビックリするくらい何もなかった。
っていうか、マジでここにいるの?
魔王ってやつは?
やっぱりこの仕事怪しかったか?
自分で言うのも何だが、剣には自信がある。
がむしゃらに鍛錬を積んで、王国一と言われるまでになった。
王を守る騎士として働いていたけれど、平和な世の中で争いが起きることもなくただ毎日制服に身を包み鍛錬する日々。
正直つまらなかった。
そんな時に魔王討伐の話を聞いた。
これだ!と思った俺は即刻仕事を辞めて、情報収集に明け暮れた。
といってもたいした事はしていない。
ただ怪しげなチラシを見つけただけだ。
魔王を倒してくださいという煽り文句の下に、落とした人には成功報酬として一生分の生活費を差し上げますと書かれてある。
落とした人というところに少々疑問を抱いたが、まぁ一生生活費に困らないならいいじゃんと思った俺は単身でここに乗り込んできたのである。
とりあえずドアを開けて奇襲すればいいのか?
……入口ってどこ?
初っ端から出鼻を挫かれる。
周りをウロウロしていると、ふわふわとした毛玉のような魔物がやってきて、俺の周りを浮遊しながら話しかけてきた。
「おや、見かけない顔ですね?
何か御用ですか?」
「ここに魔王っているんですかね?
実はこのチラシを見まして」
魔物の毛色が変わった。
「なんと!!それを見て来てくださったのですね!」
「あっ、はい」
「さぁ、どうぞどうぞ
遠路はるばるようこそおいでくださいました
足元にお気をつけくださいね
無駄に暗くてすみません」
「いえ、どうも」
魔物に案内されて客間のようなところに通された。
えっと……これから戦うんですよね……?
「あぁ、いつぶりでしょうか
ふむふむ、なかなか良い風貌をしていらっしゃる」
魔物が周りを飛びながら観察してくる。
「あの、魔王は?」
「いけない、私とした事が
ただいま呼んでまいりまーす
ごゆるりとお寛ぎくださいませ〜」
何か呟くと、豪華なティーセットが現れた。
なんだ、これは?
……そうか、油断させるつもりなのだな?
そうはいくか。
さぁ、来い魔王よ。
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