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翌日、優奈は母が買い物に出かけると、おじさんのギャラリーに向かった。おじさんに絵画教室のことを相談しようと思ったのだ。
その日は快晴だった。風が快く、たくさんの人が大通を歩いていたが、不思議に息苦しさを感じなかった。絵画教室に通いたい気持ちで心がいっぱいだったのだろう。
ギャラリーの飾り窓の絵は変わっており、今日は雨の日の街角を描いた風景画が飾られていた。
おじさんは、カフェのお客さんの応対に忙しそうだった。落ち着いた雰囲気のカフェスペースでお客さんがコーヒーやお茶を楽しんでいる様子が、優奈にとって新鮮で心地よく感じられた。坪庭や明り取りの天窓から、明るい光が差し込んでいる。
雨の日とはまた違う雰囲気があった。
「待たせてごめんな。今日はどうしたん?」
「お母さんが、学校に行ったら、絵画教室に行かせてあげるって言わはるんです……」
「……そうか……」
「私、学校が嫌いなんです。何でもみんなと同じでないとあかんし。今、流行っていることと、違うことに夢中になってもあかんし」
優奈は日々感じていること、同調圧力がしんどいこと、教師の権威主義が嫌いなこと、高校の入学試験に合格するためだけに、難しい受験勉強をさせられることに意義を見いだせないことなどをありのまま、おじさんに打ち明けたのだった。
「なるほど、そんなことがあったんやね」
「でも、大人にこんなことを話したのは今日が初めてです。どうせ、言ってもわかってもらえへんって思ってたし」
「おじさんみたいに、なんにも知らん相手の方が話しやすい時もあるよね」
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