雨の音色

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   有名人になったことで過信が生まれ、私は天狗になっていた。周りの人間は皆が歳上ばかり。それなのにヘコヘコと頭を下げて、腰が低い。yuuちゃん凄いよ凄いよ、そう言って。  調子に乗った私は、ピアノを使って自分の曲を作った。他の人の手を借りずに自分だけの楽曲を。それをレコード会社に伝えると、「よし! 出しましょう!」と二つ返事で了承された。  あれだけ父からは否定された私の曲は、こうもあっさりリリースされるのか。  レコーディングを終え、CDになったときはなにか特別な感情を抱いた。初めて自分で書いた曲。確かに、今まで私が歌ってきたような明るい楽曲ではない。どこか暗い雰囲気を持っている曲だが、これが今の私なんだ、そう思えるような曲に仕上がった。  頭の中ではまた忙しい日々が始まる、そう思っていたのに、セールスは思いのほか伸びなかった。  大丈夫、次がある。  私はまた別の曲を作った。次こそはヒットを生む楽曲だから、大丈夫。  しかし、世間は甘くはなかった。  私のデビューシングルは売り上げランキングでもトップ10に入るほどのセールスを記録したにも関わらず、作詞作曲した自分の曲はランキングに入ることすらなかった。  周りの人間は面白いぐらいに手のひらを返し、あれだけチヤホヤされていたのが嘘みたいに人は離れていく。  十九歳でデビューして、たった六年で私は完全に世間から名前が消えた。  大手レコード会社からは契約を切られ、忙しかった日々はいつしか白紙のスケジュールに変わっていく。仕事はほとんどなく、貯金を切り崩していく毎日。  たまに入る仕事は、地方の小さなライブハウスでのライブやショッピングモールでの演奏ぐらい。何万人と入るホールでのツアーなどもう夢の話だった。    それでも親に頼ることはできない。私にだってプライドがあったから。  父と同じミュージシャンを目指し、世間に認められたと思っていた。でもそれはただの幻想だった。助けてよお父さん、なんて言えるはずがない。  父からも連絡はなく、私のことはすでに見捨てていたのだろう。一発屋の娘。世界的なミュージシャンにとって、それは不名誉なことのはず。父の顔に泥を塗ったと思っていた。
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