ジョルジュとカウントダウン

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 ある国はジョルジュの“命令”が自分たちに飛んでくることを恐れ、ある国は地球環境の強制的な改善に近づくことを歓迎した。  その反応はどちらも正しい。  ジョルジュの“執行”は間違いなく、マルチタル王国だけで終わるはずがないのだから。 『僕は、地球環境をより良くするために生まれました。ですので、僕の持ちうるあらゆる力を使って世界を良くしていこうと思います。歓迎してくれますよね、ミセス?』 「ええ、ええ……勿論よ」  私は。  この時点で少し怖くなりつつあった。たとえ執行は彼が個人的に行うとしても、彼を開発し管理しているのは間違いなく私と私のチームなのだから。  マルチタル王国の件を契機に、ジョルジュはどんどん各国の“環境問題”に着手していくことになる。特に彼は、侵略戦争を起こした国と、マルチタル王国のように他国にまで迷惑をかけるような環境汚染をした国に厳しく対処した。侵略戦争を行った国はかなりの大国であったため反発も大きかったが、ジョルジュがその国のコンピューターをハッキングして兵器工場を爆破させると一気に大人しくなったのだった。  彼の優秀な点は、鞭のみならず飴の使い方が上手いところでもあったのだろう。  彼が提示する環境問題への取り組みに忠実に対処した国や企業に対しては、彼は彼が持ちうるあらゆる知識や技術、資金を動員して褒美を与えた。最適な取引先相手を教えたり、素晴らしい自動車の作り方を教えたり、仲間のAIに協力を要請したりといったことを行ったのである。  ジョルジュに従えば、想像以上のメリットがある。実際、ジョルジュは環境問題以外にも積極的に手を加えた。人類が欲しい物を与え、要らないものはどんどん間引いていったのだ。彼の優秀さを目の当たりにした世界は少しずつ、ジョルジュという存在の命令に逆らわなくなっていったのである。  そして、私自身の考えもまた。 『●●砂漠ですが、あそこにソーラーパネルを設置するのがいいでしょう。あの熱と光は、太陽光発電に極めて適しています』 『☓☓工場の汚染ですが、燃料を▲▲に替えることで大きく軽減することが可能です』 『○○企業のコスト削減ですか?お任せください。下働きの労働者たちの殆どを私の仲間であるロボットたちに担わせましょう。大幅なコストカットと同時に、過重労働に勤務していた者たちには学校に通って学んでもらうことができるようになります。国全体の知的水準が向上することでしょう』 『確かに、その仕事は人間が担うには危険です。わかりました、私の仲間のAIの皆さんが出来るよう、私から指導いたしましょう』 『ええ、ええ。お任せください。皆さんのご協力のおかげで、世界の環境はこの一年で大幅に改善しました。具体的には……』
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