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中は奥行き二十数尺程度、大体十坪くらいの広さで、大きめの本棚が中央に鎮座し、対面である壁際の棚は、日付と番号が沢山振られている。
掃除が行き届いているのか、全体的にこざっぱりとした様子で、埃を被っているようなものは、一つも見当たらなかった。
女は、――定位置なのだろう、入り口から見える、一番奥のカウンターに腰かけた。
呼吸が本調子でない。顔が紅潮しているのが自分でも分かる。
薄暗い照明に感謝しつつ、慎重な足取りでカウンターに向かった。
「……ありがとう、ございます」
――率直な気持ちだった。女は再び、クスリと笑った。
「いいんですよ、困ったときはお互い様ですから」
艶めかしく照らされる女の紅と白のせいで、感謝の気持ちが揺らいでしまう。
慌てて店を見廻しながら、話題を変えた。
「ここは本屋……、ですよね?」
「それ以外に見えますか?」
はにかんでいても、女の目は笑っていない。
「す、すみません」
「ふふ、ごめんなさい。怒ってませんよ。でも、――半分当たりで半分外れです」
女の戯れに安堵しつつも『半分外れ』が気になった。
視線を店内に泳がすと、女はすかさず「半分は古新聞屋でございます」と答えた。
古新聞屋――、随分と聞き慣れない言葉である。塵紙回収ならばそう名乗るであろうし、新聞の目的が多分違うのだろう。
店に置かれているもの。――半分は本で、半分は新聞だ。
書店に定番の雑誌はなく、中央の棚には一昔前の円本から最近の文庫本まで、手堅い内容の書籍が取り揃えられていた。
壁側は、よく見ると新聞で埋め尽くされている。
全国的に有名な新聞もあれば、よく知らない週刊新聞、地方新聞から英字新聞まである。
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