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#35 なにもたもたしてんだよ
き、緊張してきた〜!!!
普段よりも少し洒落た服を身に纏ったるりは今、以前一路のバッシュを探しに訪れた街の駅前で、瞬人のことを待っている。
一路に少しくらいオシャレしてけって言われたからちょっとめかし込んでみたけど、へ、変じゃないかな……
そわそわと、先ほどから何回も身なりをチェックしては、こんなおばさんがこんなひらひらしたスカートなんか着ちゃって、とプリーツスカートを着てきた自分を悔いるるり。いつ購入したのかも思い出せぬこれは今すぐ脱ぎ捨てて、普段のパンツスタイルに着替え直したくなるが、そこへ瞬人がやって来た。
「るりさん、お待たせしちゃってすみませんっ」
「しゅ、瞬人くんっ」
え、かっこよ。
学校の制服や、ジャージ姿ではない瞬人にお目にかかる機会は滅多にないるりだから、颯爽と現れた彼の爽やか夏コーデに、思わず見惚れた。
ちょ、やばいんですけどわたしの心臓っ。今にも飛び出ていっちゃいそうっ……!
ドキドキと、高鳴る胸。そこに手を運ぶるりと同様に、瞬人の鼓動も加速していく。
なに今日のるりさん、めっちゃ可愛いじゃん!
いつもとは少し違ったるりの服装に、瞬人の心は掴まれた。早く想いを告げたい、付き合いたい、と強く思ったら、無意識にるりの手をとっていた。
「じゃあ行きましょ、るりさん」
「え、行くってどこに」
「決まってんじゃないですか。この前一緒に行ったあの場所ですよ」
そう言って、ずんずんと歩みを進める瞬人にるりが連れて行かれたのは、以前訪れたカラオケ店だった。瞬人から話があると、家以外でふたりきりになれる場所がいいとこの街に呼び出されたるりだから、それなりの覚悟はしていたけれど、やはり暗い部屋の中へ入ってしまえば、緊張は高まった。
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