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まだくっついてねーのかよ。
瞬人がるりへ想いを伝えている頃、一路は自宅で、実とゲームをしていた。「瞬人くんと上手くいったらすぐ報告するね」と言って玄関を出て行ったるりなのにもかかわらず、一向に寄越されぬ連絡に、一路は焦れた。
互いに好き同士なんだから、会ってそっこー「好きです」「俺も」で付き合えんじゃねえの?なにもたもたしてんだよ。
恋愛経験皆無な一路なので、そういった類のノウハウもゼロ。イライラし始めた彼に、実の呑気な声が届く。
「瞬人の兄弟く〜ん。次君の番だぞ〜、ここで巻き返さないと、お前俺に負けんぞ〜」
欲する連絡がこない上にゲームにも敗北しそうで、一路のご機嫌は傾くだけ。
「うるせえなあ実っ。俺と瞬人が兄弟だって知ってから、お前まじでその呼び名しつけーぞ!」
「だってびっくりすんじゃんそんなの。びっくりしたら、使いたくなんじゃん」
「あーあ、そんなんだからお前はモテねえんだよ」
「な!今それ関係あるかよ!」
「関係ねーよ、悪いかよ。この非モテ男」
「なっんじゃそりゃ!!」
この理不尽!と叫んだ実を無視して、一路はスマホに目を落とす。そうしている間にもゆっくりと少しずつ、るりと瞬人は気持ちを確かめ合っているのだ。
「瞬人くんのことを、ずっと否定してきてごめんなさい……」
頬に伝う涙を拭って、るりは瞬人を見つめて言う。
「怖かったの。もし瞬人くんとわたしが付き合ったらまわりにどう思われちゃうんだろうって、軽蔑されちゃうんじゃないかって。それに息子の友達を好きになるなんて、高校生を好きになるなんて、いけないことだと思ってた……」
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