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息継ぎもせずに、るりは捲し立てるようにそう言った。すぐに「うん」と頷きたいのに、瞬人は感動のあまり、行動が鈍くなっている。
「瞬人くん……?」
固まり尽くす瞬人を見て、不安を抱いたるりは聞く。
「本当に、わたしなんかでいいの……?やっぱなしなら、今言ってほしい」
いいに決まってるじゃないですか。
その台詞は涙で上手く言えそうにもなかったから、瞬人はるりを抱き寄せた。
瞬人くんっ。
瞬人の温もりに包まれたるりが、心の底から感じる幸せ。
瞬人くん好き、すっごく好き。本当に大好きだよ。
返事のない瞬人だけど、それがどうしてだかは何となく察しがついたから、少し震えた彼の身体を、るりは愛おしく思う。
暫くして落涙が落ち着いてきた瞬人は、胸元からそっとるりを剥がして見つめた。にんまりと口角を上げてとても嬉しそうな彼女が、彼の心を踊らせた。
「るりさん」
「うん?」
「まじでめっちゃ、大切にします」
「ふふっ。うんっ」
「もう二度と手離す気ないですけど、いいですか」
「うん、いいよ」
「結婚前提ですよ」
「うん、前提ねっ」
ひしひしと感じる幸せと共に、そんな会話をしていると、瞬人が突然俯いた。
「やべえ……」
「え、やべえ?」
「…………キス」
「へ」
「キス、したい」
「ええ!ちょ、ちょっとっ」
拒む気はなかったが、急なことで驚いたるりは思わず顔を横に背けた。さすれば頬にあたる瞬人の唇。ほっぺにキス、それはそれでなんだか照れた。
ちゅ。
優しいリップ音を立てながら、何度か頬にされるキス。物足りないと思ったら、るりの顔の位置は戻された。
「んっ」
唇と唇が重なって、指と指を絡め合う。ふたりでした初めてのキスを思い出しながら、彼等は時間の許す限り求め合った。
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