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「た、ただいま!紹介したい子ってだだだ誰!」
息子に初めての恋人ができたかもしれない、とそう思えば、転がりそうな勢いで玄関から子供部屋へ飛び込んだるり。どんな子だろう、可愛いのかな、と妄想を膨らませながら四畳半を見渡した、その時だった。
「おかえり母ちゃー……って、え!閉めんのかよ!」
壁に寄りかかっている解せぬ人間が見えたから、彼女は思いきり扉を閉めた。バクバクと、騒ぐ心臓。正気ではいられなくなってくる。
は……?今のなに……ゆ、夢……?
閉めた扉に背を預け、るりは今見てしまった映像を頭の中で再プレイ。
一瞬しか見てないけど確かにいた、絶対いた。でもなんで、どうしてうちに優太が。
彼を思い出すだけで、るりの心にかかるのは黒い靄。それは身体に大きく支障をきたし、彼女を芯まで震わせていく。
なんで、なんでなんでっ。あり得ないでしょ今さらっ。誰か間違いだって言ってよ。じゃないとわたし、わたし──
震えながらも、ぴきっとるりのこめかみに浮き立つ血管。ググッと奥歯を噛み締めた時、扉が開いて姿勢を崩す。
「きゃっ!」
「わ、危なっ!……と、セーフ」
倒れそうになったるりを支えたのは、一路と同じ制服を身につけた男の子だった。彼の胸元にぽすんとおさまった彼女は、そのままぐるりと首をまわし、顔を確認。しかしそれがつい今しがたるりの血管を浮き立たせた相手だったので、彼女の口からは威嚇するような声が抜けていく。
「ギャオ!」
「え」
「グァァァァオウ!!」
「え、えーっと……」
恐竜みたいな奇声を発するるりの前、戸惑う友人からちらりと横目を向けられた一路は、そんな母の頭をチョップした。
「おい、落ち着けって」
「いったあい!」
「痛いじゃねえよ、なにやってんだよさっきから。瞬人困ってんじゃん」
「しゅ、瞬人ぉ??」
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