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(四年前、どんな状況だったんだよ。)
香子が誰かとつるんでいる姿を見た記憶がない。図書室で勉強するところ。深見と話しているところ。覚えているのはそれくらいだ。
孤高の人、のように思っていた。だがあれは「孤立」だったのではないか。
『あの人、うちの学校の理事長の親戚なんでしょ?だからそういうのも見て見ぬふりされてるんじゃないかって』
学校というところは平等・公平が建前になっているだけに、生徒は「贔屓」に対して敏感だ。特にこの学校のように内部進学が多いところでは、みな内申を気にしている。
ただテストの点が良かったというだけでそんな噂の立つ状況の中、学校での居心地が良かったはずがない。
(だったらどうして今、ここに戻って来たんだ?)
休日を削ってまで高崎と一緒に仕事をしている。その意味するところは?
絵に関係のないことだという自覚はある。もしも二人がそうだったとして、学校を卒業した今となっては、独身の男女間に何の問題もないことも。
(俺が気にすることじゃない…)
「何なの?」と眉を吊り上げている葉山に背中を向け、絵は歩き出した。結局シャーペンの芯を買い忘れたことに気が付いたのは、教室に戻ってからのことだった。
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