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「ごめんね、その日に当番に入りたいって言ってきたの、あなたで三人目。全員のリクエストに応えられないし、こちらからシフトは変えられません。どうしてもって言うなら委員同士で話し合って決めて」 「…じゃあ!夏休みはどうですか?もう決まってるんですか?まだなら…」 「部活や家庭の事情で当番に入れない日は、今度の委員会でアンケートを取ります。それ以外のリクエストは聞いていたらきりがないから、委員同士で調整してください」  ぴしりと言い切ると、女の子はみるみる涙目になり、それでも一応ぺこりと頭を下げてから走り去った。背後からすすすと佳奈美が近寄り、「今日の子はいい子だったねー。この間の子みたいにひどい!冷たい!とか言い出さなかったし。顔も可愛いし」と耳元で囁く。 「顔は関係ないでしょ」 「ねえねえ、6月10日と7月13日の当番してる人気者って誰?中学生でそんなモテモテって将来有望じゃない?」 「中二の子。瀬戸崎くん」  答えながらその人気者を思い浮かべる。スポーツが得意そうな、闊達な男の子だった。親しみやすい空気で、委員会でもいろいろな生徒と屈託なくしゃべっているところを見かける。一言でいうなら「陽キャ」だ。 「4つ下かー。さすがに今は範疇外だけど、十年後は期待がもてそう」  勝手なことを言っている佳奈美を放って席に戻る。理不尽に割り当てられた損な役回りに、どっと疲れを覚えた。
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