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 美澄伯母は外科医で、同僚の医師と結婚して生まれたのが直兄だ。美澄伯母の仕事中毒が災いしてか結局離婚してしまったけれど、うちのような泥沼ではなかったので、直兄は両親ともそれなりに円満に付き合っているようだ。 「今度三者面談があって、保護者なしの二者面談ではどうしてもだめだって言われちゃって」  高崎先生に二者面談を打診したけれど、渋い顔をされてしまった。 『お父さんは海外にいるんじゃどうしようもないけど、他に来てくれる人はいないのか?進学については保護者の了解を取らなきゃいけないんだ』 『書面じゃだめですか?』 『最低一度は保護者を交えて面談するルールになってる』  よく家の人と相談して、と締めくくられても、そんな相談先があったらこんなことにはなっていないのだ。そう文句を言ってやりたかったけれど、高崎先生を困らせたって仕方がない。 「俺が行ってやろうか?一応身内の大人だし」 「直兄じゃあ、ね」 「どういう意味よ」 「急に病院に呼び出されてドタキャンするのが目に見えているじゃない?」 「あ、そっち」   直兄は悪い大人であると同時に研修医でもある。親の後を継ぎたいとかじゃないんだけどさ、と口では言いつつ真面目に勉強して国立大学の医学部に進んだあたりに、両親との良好な関係性が見えて少し羨ましい。 「まあ、確かに臨床研修は噂に違わぬキツさだわな。約束の日時を守る自信は正直ない。今日もよく来れたよ、俺」 「でしょ。…面談はあの人に頼むから、いいよ」  祖母に頼む以外の選択肢がないのも分かっていた。直兄は黙り込む。もちろん祖母のことは直兄もよく知っている。日頃の素行の悪さで、直兄も決して祖母との折り合いは良くないのだ。   「香子はさあ」  直兄がグラスに目を落としながらつぶやく。 「もっと叔父さんに対して怒っていいと思うんだよな」
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