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「……なんでいるの、レイちゃん」
「あたしも行くから。パパとママには言ってあるから安心してね」
土曜日早朝。
ヨウが車に荷物を積み込んでいたところにレイは突撃した。そして、彼の姿を見てちょっと驚いた。
いつもはボサボサ頭で、服もラフな格好だったのに、今日は髪をきれいに整えて、白シャツにスラックスという出で立ちだった。仕事というのは本当らしいが、車に積み込んでいる荷物は、あの布袋。中の羊毛フェルトは、百や二百を越えていそうなくらいの大荷物だった。
「僕ほんとに仕事なんだけど……」
「邪魔はしないよ。ヨウ君が働いてる間、ワタちゃんの面倒みとくからさ」
一緒に行くらしいワタを抱き上げて、レイはにこりと笑む。
ヨウは観念したらしく、ため息をひとつついて、乗車を促したのだった。
けれどまさか、片道四時間を越えるロングドライブになるとはレイも思っていなかった。
高速道路にのって、サービスエリアをいくつもはしごして、それはそれで楽しい道中だった。
「これから行くところは、例年渇水に悩まされててね」
道すがら、ヨウは仕事のことを話した。
「ダムはあるけど、雨が少なくて。だからこうやって、雨雲を作りにいってる」
「簡単に言ってるけど、ヨウ君、めちゃくちゃすごいことやってるからね? 魔法みたいじゃん」
「僕はすごくないよ。すごいのはワタさ」
「改めて思うけど、ワタちゃんって、何なの?」
「それを突き止めることが、僕の今のところの目標なんだ」
そう言うヨウの顔は、少し楽しそうだった。
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