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「着いたよ。袋下ろすの手伝ってね、重いから」
「はいはい」
到着したのは、ダム湖に併設された公園の駐車場だった。他に車は一台しかなく、ヨウとレイが降りるのと同時に、その車から誰か降りてきた。
「海野さーん」
レイは耳と目を疑った。
女の人だ。
「ご無沙汰です。あ、私も手伝いますよ!」
「あ、だ、大丈夫です、今日は連れもいるので」
「連れ……?」
レイと目が合ったその人は、メガネをかけた涼やかな美人だった。お互いに視線が交わると、二人とも固まってしまう。
「あ、あの、お連れって、えーと」
「あ、あたしは、えーっと」
「あ、し、紹介します、姪です」
「姪? ……ああ! 姪御さんでしたか! ずいぶんお若いのでびっくりしました」
「う、海野レイです、よろしくお願いします。……ちょっとヨウ君、会う人のことくらい教えといてよね」
「ご、ごめん……?」
女性は額や首筋の汗を拭いながら、胸を撫で下ろした。
「本当ですよ、私も姪御さんがいらっしゃるなんて初耳です。あ、申し遅れました。私、地域活性課の立花アマネと申します。よろしくお願いしますね、レイさん」
アマネは、年下のレイに対しても丁寧に名乗る。
さすが大人の女性といった感じで、さっきまでの焦り様は少しも残さず、余裕すら感じられる。
未だにちょっとドキドキしてドギマギしているのはレイの方だったが、それでも彼女は見逃していない。
ヨウが女の子を連れているのを見て、アマネが焦っていたことを。
(ほほぅ……?)
レイの中の何かのセンサーが反応した。
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