絡んでいく感情

11/11
2420人が本棚に入れています
本棚に追加
/429ページ
 加賀見の後を何度もつけて、偶然を装って帰り道に話しかけたりもした。  だって今まで白戸が狙った男性は、全員が自分の虜になったのだ。  だから当然、加賀見もそうなるだろうと思っていた。  でも……加賀見だけは違った。  加賀見は一度も白戸に振り向かなかった。  それどころか、加賀見の視線の先にはいつも同じ女性が立っていた。  それでも白戸が救われたのは、加賀見の視線の先の女性は、加賀見を見ることがなかったからだ。 「付き合ってるって言ったって、嘘だってすぐにわかった」  納会の夜、みんなが二人のことを付き合っていると勘違いしても、白戸の目はごまかせなかった。 「だから、すぐに壊れるだろうと思って揺さぶったのに……」  白戸は穂乃莉に、宣戦布告した日のことを思い出す。  あの時、穂乃莉は動揺していたはずだ。  それなのに……。  出張から帰って来てからというもの、二人の様子は明らかに変わった。  ――もう退職まであと少しなのに……。なんであんなに、幸せそうにしてるのよ!  白戸は静まり返った更衣室で、下唇をぎりりと噛みしめた。
/429ページ

最初のコメントを投稿しよう!