プロローグ

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プロローグ

「社内恋愛……契約……?」  久留島 穂乃莉(くるしま ほのり)はつぶやく様に声をだすと、目の前のひどく整った顔を見上げた。  小さく開いた口元からは、白い息がかすかに漏れる。  さっきまで寒さでマフラーを握り締めていたはずの両手が、行き場を無くしてさまよっていた。  今日はクリスマスイブ。  恋人たちのために用意されたようなこんな日に、相も変わらず残業し、みんなで一杯と陽気に笑っていたのは、ついさっきのことだったはずだ。  先に店を出たメンバーたちはもう駅についているのか、まっすぐと続く歩道には後ろ姿さえ見えない。 「久留島のお嬢様のお前が、会社を辞めるまでの三ヶ月間。俺と社内恋愛しようってこと」  もう一度耳元で艶のある低い声が響く。  加賀見 陵介(かがみ りょうすけ)はその切れ長の目を細めると、穂乃莉の腰に手を回し身体を引き寄せた。 「ちょ、ちょっと待って」  慌てて顔を背けようとした穂乃莉の顎先は、加賀見の長い指に捕らえられる。  どこかミステリアスな鋭い瞳に見入られて、穂乃莉は思わず息を止めた。 「じゃあ手始めに、ここでキスでもしとく?」  加賀見はまるで楽しむようにそう言うと、いともたやすく穂乃莉の唇を奪っていった。
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