二人きりの出張

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 恰幅の良い紳士的な男性は、ホテルの関係者と思わしき黒いスーツにネクタイという出で立ちで、後ろに部下らしき男性を二人連れている。  年齢は50代くらいの、その男性から一旦目線を逸らした穂乃莉は、急にはっとするともう一度顔を上げた。  ――もしかして……支配人?  支配人の顔はホームページで、何度か見たことがあった。  穂乃莉は、軽く腰を浮かせながら男性に向かって小さく会釈をする。  男性は満足そうに目を細めると、軽く片手を上げこちらへ向かってきた。  するとその様子に気がついた吉村が後ろを振り返り、急に慌てたように立ち上がる。 「原田支配人。お疲れ様です」  吉村が深々と頭を下げ、その声に穂乃莉と加賀見もすぐに立ちあがると同じように頭を下げた。  やはりこの男性が、今まで穂乃莉が一度もアポを取れなかった支配人だったのだ。 「吉村君。そちらは?」 「はい。KRS(ケーアールエス)トラベルの方で、ツアープランのご提案に来られています」 「ツアープラン?」  支配人はあからさまに眉を潜める。  “東雲リゾートホテル”がツアー客を取らないことは有名な話だ。  加賀見が説明しようと口を開きかけた時、意外にも吉村が先に声を出した。
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