4人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
第1章 起
「家に帰ると見知らぬ人の死体があった」
僕は渋々話すというふうにしてはいたが、初めてのことで自分の中の強い好奇心が沸き立つのも感じていた。
「そこから始まって、『話は少しさかのぼるが』って言って朝のバタバタした様子を話し出すんでしょ? そういう始まりってよくあるよね」
幼馴染のメンツが集まった飲み会。由梨はいつものようによく喋るが、いつもよりもつまらなそうに言い返した。今日は虫の居所が悪いんだろうか。
「倒叙ミステリだよな。最初の引きの場面だろ。ミステリに限らず、映画やドラマでもあるし、音楽で冒頭にサビを持ってくるのも同じじゃないか? 読者に興味を持たせるためだろ」
飲み会の会場としてアパートの部屋を貸してくれている優吾がフォローするように説明をしてくれているが僕が言いたいのはそういうことじゃない。
静かに聞いていた詩織だけが期待した反応をしてくれた。
「えっ? ちょっと待って、死体があったってホントの話ですか?」
詩織は昔から同い年の僕たちに対しても敬語で喋る変わり者だ。
僕は言葉では何も言わずに頷いてみせた。
最初のコメントを投稿しよう!