5人が本棚に入れています
本棚に追加
ところが、学生時代の親友からメールが入り、急な出張で名古屋に行くので、夜に飲もうと誘われた。出張手当をもらってるので、奢ると言われたら、断ることなんてできやしない。
夜、多少遅くなっても、静かに水やりをすればいいや、と思って飲んだのだが、いざ帰宅すると、めんどくさくなって、朝三十分早起きしてやればいい、と自分に言い聞かせて、就寝。
スマホの目覚ましをいつもより早くセットするのを忘れたため、翌朝、いつもの時間に起きて、真っ青。
しまった! 今日はゴミの日だ。しかも、昨日風呂に入りそびれた。シャワーを浴びなければ。あっ、洗濯物がたまっている。ワイシャツの替えがなくなってしまう。
パニクりながら、段取りをした。
まず、洗濯機を回し、その間に、ゴミを集めて、ゴミステーションに持って行く。急いでシャワーを浴びて、洗濯物を室内に干す。
結局、水やりする時間は取れなかった。
四日目の今日こそ早く帰って水やりをしなければ、と自分に強く言い聞かせて、家を出た。
まっすぐ帰る、つもりだった。午後一に田所課長から出張を命じられるまでは。
「船橋君」
やさしい声で呼ばれるときはろくなことがないと、経験上わかっている。
「東京の得意先から電話があって、システムトラブルが起きたので、至急来てほしい、と言われたんだ。俺たち名古屋支所が設置したんだから、責任がある」
そう言われれば行かざるをえない。
「課長、今日中に帰れますよね?」
おずおずと聞いた俺に、課長は声を潜めた。
「そんなことわかるか! いいか、これが失敗したら、俺もお前も出世の道はないぞ」
それ以上は何も言えなかった。
急いで会社を出て、課長と二人で、来た新幹線に飛び乗り、東京に向かった。
得意先で、午後八時まで奮闘したが、治らない。やむを得ず、ビジネスホテルをとり、仕事を翌日に持ち越すことにした。
最初のコメントを投稿しよう!