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公園に七月のギラリとした日差しが戻ってきた。緑の芝生の上で、特殊機材、略して特機のチームが、雨降らし用のホースにテープでせっせと応急処置を施している。
また、取りたくもない休憩を取ることになってしまった。
木陰に置かれたパイプいすで、町田は深いため息を吐いた。太陽が雲に隠れている内が絶好のチャンスだったのに。遠くの歩道から様子を窺っている数人の野次馬に対しても、少し申し訳なく思った。
町田はディレクターとして『冷たい雨は愛になる』を成功させようと意気込んでいた。このドラマでは、雨が物語の重要な鍵になっている。雨のシーンのできがドラマの完成度、さらにはドラマの人気を左右すると言っていい。いい画が撮れるまで妥協するつもりはなかった。
ところが、肝心の雨が降らない。機材を使った特殊効果・雨降らしが、なぜかことごとく失敗するのだ。
ホースを増やしても、水のタンクを変えても、公園の水道から水を引いてもダメ。先ほどは「雨っぽくない水」ならいけるかと、試してみたのだが。日時を変え手段を変え、何度も挑戦しているのに、何なんだこれは。がんばって自然の雨を利用するにしても、それすら降らない。
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