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確かにレッドは女の子が大好きで、そっちにもこっちにも仲良しの女の子がいる。ピンクをはじめとするほかのメンバーには呆れられているけれど、戦いになれば強くて、傷ついた仲間を庇って傷を受けたりするカッコいいヒーローだ。この間は子猫をかばって、事情を知らないお母さん猫に引っかかれていた。
いいことをしたのに、メンバーには
『女の子が俺を取り合って喧嘩になって、その仲裁に入ってひっかかれた』
って言って、ため息をつかれていた。でもそのため息は「しょうがないなぁ」って、あったかいため息だった。
夏の夜、ビールを飲んでソファでおなかを出して寝ちゃうパパにママがするため息と同じだ。
しょうがないなぁって、あったかいため息をママにつかせるパパはヒーローかもしれない。
そう思っていたら、寝ながらママに向かっておならをした。ママは鬼の顔になって、パパのお尻をパンって叩いていた。
面白くて笑っていたら、ママに「早く寝なさい!」って怒られた。
ヒーローもママに怒られたら、素直に寝なきゃいけない。ママはうちの司令官だ。ヒーローだけど子どもでもある僕は、寝るのも立派な仕事だ。
「咲ちゃんが危ない」
ママに言われ、保育園を休んでおじいちゃんのおうちへ向かった。
咲お姉ちゃんが危ないなら、ヒーローである僕が行かなきゃいけない。咲ちゃんを助けるんだ。
けど危ないの意味が違うって、車の中でママに教えられた。
咲お姉ちゃんはずっと入院していたんだって。ママとパパは咲お姉ちゃんが入院していることは知っていたけど、僕たちに教えなかった。僕たちに心配させないようにしたんだって。
それでも咲お姉ちゃんは元気になることはなく、このまま病院にいても元気になることはないからって、おうちに帰って来た。
最期の時を家族とおうちで迎えるために。
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