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そして今日がその「最期の時」らしい。咲お姉ちゃんと言葉を交わせる最後の日なんだって。
よくわからなくて、どういうことってママに聞いたら、ママは泣きそうな顔をして、
『咲ちゃん、死んじゃうの。もう咲ちゃんに会えなくなっちゃうの』
そう言って、下を向いて肩を震わせていた。ぐすって聞こえたから、多分泣いていたんだと思う。
ヒーローは泣いている人を慰めなきゃいけないけど、どうしていいかわからなかった。
ママを慰めるのと咲お姉ちゃんが死んじゃうってことぐるぐる考えていたら、車はいつの間にかおじいちゃんのおうちに着いていた。いつもと変わらないおじいちゃんのおうちだ。
おじいちゃんたちと一緒に住んでいる咲お姉ちゃんのお部屋は二階だったけれど、一階に変わっていた。僕らが泊まるときに使うお客さん用の部屋だ。畳の部屋で、縁側の向こうにはおばあちゃんが大好きなお花が植えられた綺麗な庭が見える。
その縁側よりに病院にあるようなベッドが置かれ、咲お姉ちゃんはそこで眠っていた。ベッドに横になったままでも外の景色を見られるように、おばあちゃんと同じで花が好きな咲お姉ちゃんのために家族で考えたんだって。
僕らが行くと、咲お姉ちゃんは寝たり半分だけ起きていたりを繰り返していた。おばちゃんによく似て丸顔だった咲お姉ちゃんだけど、今は全然丸くない。骸骨みたいだ。
怖くてママの足にギュッとつかまる。咲お姉ちゃんのはずなのに、知らない人みたいだ。
「……咲お姉ちゃん?」
病院とは違った、けど病気の人がいるにおいがする部屋で、僕は咲ちゃんの名前を呼ぶ。
「咲、綾ちゃんとユウくんが来たよ」
おばちゃんが咲ちゃんに声をかける。おばちゃんは前に見た時より、小さくなった。丸かったほっぺはどこかにいってしまったみたいだ。
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