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僕はヒーローだ。ヒーローは約束を守らなきゃいけない。
咲お姉ちゃんに虹を見せなきゃいけないんだ。
「降れー! 雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」
ちょっとユウってママの困ったような声がする。近所迷惑ってママに怒られるかもしれない。
だけど僕はヒーローだ。
『好きな女の子のためなら、ちょっとくらいの無茶はするさ』
そう言って、女の子にウインクしていたのはレッドだ。
――そうだよね、レッド。
大好きな咲お姉ちゃんのために、僕だってちょっとくらいの無茶はするさ。
「雨よ、降れー!」
「雨よ降れー」
隣からパパの声がする。空に祈りながらちらっと横を見ると、パパが僕と同じように両手に手を伸ばして声を上げている。僕が見ていることに気づいたパパは、レッドみたいにウインクをするとまた声を上げる。
「雨よ降れー」
「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」
声を上げ続けていると、遠くで雷がゴロゴロと鳴る。
雷の音だ!
僕はヒーローだ。好きな咲お姉ちゃんのために、雨を降らせて虹を見せてあげるんだ。
「雨よ降れー」
「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」
喉が痛くなるくらい声を上げていると、真っ青だった空は雨が降る前みたいにだんだん暗くなってきて、風がまとわりつくような思い感じになる。
あと少しだ!
「雨よ降れー」
「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」
『好きな女の子の笑顔のためなら頑張れる。それがヒーローさ』
頭の中で、レッドの言葉が響く。
咲お姉ちゃんのためなら頑張れる。僕は咲お姉ちゃんのヒーローだから。
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