ヒーローの約束

6/6
前へ
/6ページ
次へ
 僕はヒーローだ。ヒーローは約束を守らなきゃいけない。  咲お姉ちゃんに虹を見せなきゃいけないんだ。 「降れー! 雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」  ちょっとユウってママの困ったような声がする。近所迷惑ってママに怒られるかもしれない。 だけど僕はヒーローだ。 『好きな女の子のためなら、ちょっとくらいの無茶はするさ』  そう言って、女の子にウインクしていたのはレッドだ。  ――そうだよね、レッド。  大好きな咲お姉ちゃんのために、僕だってちょっとくらいの無茶はするさ。 「雨よ、降れー!」 「雨よ降れー」  隣からパパの声がする。空に祈りながらちらっと横を見ると、パパが僕と同じように両手に手を伸ばして声を上げている。僕が見ていることに気づいたパパは、レッドみたいにウインクをするとまた声を上げる。 「雨よ降れー」 「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」  声を上げ続けていると、遠くで雷がゴロゴロと鳴る。  雷の音だ!  僕はヒーローだ。好きな咲お姉ちゃんのために、雨を降らせて虹を見せてあげるんだ。 「雨よ降れー」 「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」  喉が痛くなるくらい声を上げていると、真っ青だった空は雨が降る前みたいにだんだん暗くなってきて、風がまとわりつくような思い感じになる。  あと少しだ! 「雨よ降れー」 「雨よ、降れー! 虹よ、出ろー!」 『好きな女の子の笑顔のためなら頑張れる。それがヒーローさ』  頭の中で、レッドの言葉が響く。 咲お姉ちゃんのためなら頑張れる。僕は咲お姉ちゃんのヒーローだから。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加