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僕はヒーローだ。
テレビで見るヒーローのように足は速い。保育園の運動会ではいつも一番だ。弱い者いじめもしない。それは格好悪いことだって、いとこの咲お姉ちゃんが言っていた。ヒーローは困っている人を助けるのが仕事だから、僕も困っている人には「どうしたの?」って聞ける。
咲お姉ちゃんが両手いっぱいに荷物を抱えていて、玄関を開けられなかったとき、開けてあげたら「ありがとう」って言ってくれた。「ユウくんは私のヒーローだね」って。
その日から、僕はヒーローになった。
そんなヒーローな僕にも弱点はある。トマトと……女の子に弱いところだ。
でも自分の弱みを知っているのは強いことだって、ヒーローたちの司令官が言っていた。
『弱いことを認められるのは強い心があるからだ。弱さを知ったなら、それを克服する努力することも、その強い心でできるはずだ』
司令官の言葉で、すぐに喧嘩しちゃいがちなイエローはぐっとこらえることを学んだ。
克服っていうのは、頑張ってできるようになることなんだ。
だからトマトを食べるのも克服できるように頑張っている。
『ヒーローは頑張ってできるようになるから、ユウくんもトマトを食べられるようになるよね』
咲お姉ちゃんに言われたから、頑張ってトマトを食べる努力をしている。食べられるようになったら、咲お姉ちゃんが褒めてくれるかもってママが言っていたから頑張っている。
咲お姉ちゃんに褒めてほしいわけじゃない。ヒーローは弱点を克服するからだ。
でも咲お姉ちゃんにほめてほしいっていうのもちょっとはある。咲お姉ちゃんは、僕のお姉ちゃんみたいに怒ったりしない。いつも「ユウくん」って優しく呼んでくれるから好きだ。
ヒーローだから女の子に弱いのも克服しなきゃいけない。けれどパパがちょっとの弱点はその人を魅力的に魅せるから、無理に克服しなくてもいいって言っていた。
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