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「何が目的だ?
百円やるから俺と関わるのはよしてくれよ」
財布から俺の数少ない所持金を奴に渡してやった。
「ついでに雨を降らせるのもやめてくれないか?他に下校する生徒も困ってるだろ」
周りを見ると学校から出れない生徒がちらほらと増えてきた。
そして生徒のほとんどがこちらの様子を窺っている。
まあそうだろうな。
急に雨が降るとなると、ついコイツを疑っちまうからな。
雨賀歩瑠音。
根暗でコミュ障な高一。
学校の噂に聞くと、この女は自分の意思で雨を降らせることが可能らしい。
そんな妙に不思議な能力を持ってるせいで、友人と呼べる者はいないようだ。
「せ、先輩!私、嬉しかったんです!」
俺の発言を無視して、雨賀が俯いて何かを喋り出した。
「こんなものを持ってるせいで、私に近づいてくれる人はいませんでした」
けど、先輩だけは違いました!
急に俺の顔を見て雨賀は潤んだ瞳で続けた。
「私がいつものように中庭で寂しくお弁当を食べていると、あなたが隣に座ってくれました」
あー……そんなことあったなぁ。
「最初は私のことを知らない人だと思ってましたが、先輩は言ってくれました」
『あー、次の体育、持久走かぁ。嫌だなぁ。
雨とか降ってくんねえかなぁ』
「そう私に頼んでくれましたよね?私を必要としてくれましたよね?」
言ってたねえ。
体操服姿で独り言のように呟いてたわ。
お前のことも学校の噂で聞いたから、本当かどうか試してみたんだったな、あの時。
実際マジで体育が始まる前に雨が降ったんだったな。
あの時本当に凄えと思ったわ。
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