1.切ない音

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話しながらふと気が付いた。 こんな時間まで残業しているくらいだ。夕飯は絶対まだだろう。 「そう。マジで腹減ったー」 伸びをしながら、大橋さんは言った。 「お夕飯はいつもどうしているんですか?」 何となく、話の流れで聞いてみた。 ようやく話せる話題が出来てホッとしていた。 「俺?まぁ一人暮らしだから、適当だよ。惣菜とか外食とか…気が向いたときは作るけど、ここのところ忙しいから無理だな」 「じゃあ、今日はこれからどうされるんですか?」 「うーん…もう近所のスーパーも閉まっているし、コンビニか居酒屋でサッと食べて帰るかだなぁ…」 「そうなんですね…」 思いの外、大橋さんは結構話してくれる人で、私も話しやすかった。考えてみれば、美織さんと仲が良いのだ。大橋さんもきっと美織さんと近しいものはあるのかもしれない。 だから、つい、言ってしまった。 「あの、食べて帰られるなら、ご一緒しましょうか…?」 すると、大橋さんは目を大きく見開いていた。 私も自分で自分の言った言葉に驚いて、慌ててしまった。 「あ、いえ!あの、一人よりは楽しいというか、いえ、私とで楽しいかは分からないですけど…!それに、大橋さんとお話する機会ってなかなかなかったので…」 かなり早口で私は言った。 その様子を見た大橋さんは、しばらく黙っていたが、やがてプッと吹き出して笑っていた。 「あはは…いや、榎原ってどんなヤツなのかなって思っていたけど、アイツと近いタイプだな」 大橋さんの言う、”アイツ“って誰だろう? そう思いながら首を傾げていると、大橋さんは尚も笑いながら、 「殿塚だよ」 と、教えてくれた。
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