587人が本棚に入れています
本棚に追加
話しながらふと気が付いた。
こんな時間まで残業しているくらいだ。夕飯は絶対まだだろう。
「そう。マジで腹減ったー」
伸びをしながら、大橋さんは言った。
「お夕飯はいつもどうしているんですか?」
何となく、話の流れで聞いてみた。
ようやく話せる話題が出来てホッとしていた。
「俺?まぁ一人暮らしだから、適当だよ。惣菜とか外食とか…気が向いたときは作るけど、ここのところ忙しいから無理だな」
「じゃあ、今日はこれからどうされるんですか?」
「うーん…もう近所のスーパーも閉まっているし、コンビニか居酒屋でサッと食べて帰るかだなぁ…」
「そうなんですね…」
思いの外、大橋さんは結構話してくれる人で、私も話しやすかった。考えてみれば、美織さんと仲が良いのだ。大橋さんもきっと美織さんと近しいものはあるのかもしれない。
だから、つい、言ってしまった。
「あの、食べて帰られるなら、ご一緒しましょうか…?」
すると、大橋さんは目を大きく見開いていた。
私も自分で自分の言った言葉に驚いて、慌ててしまった。
「あ、いえ!あの、一人よりは楽しいというか、いえ、私とで楽しいかは分からないですけど…!それに、大橋さんとお話する機会ってなかなかなかったので…」
かなり早口で私は言った。
その様子を見た大橋さんは、しばらく黙っていたが、やがてプッと吹き出して笑っていた。
「あはは…いや、榎原ってどんなヤツなのかなって思っていたけど、アイツと近いタイプだな」
大橋さんの言う、”アイツ“って誰だろう?
そう思いながら首を傾げていると、大橋さんは尚も笑いながら、
「殿塚だよ」
と、教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!