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なかなか上手く行かないな…と思っていると、大橋さんがクスクスと笑い出した。
「ありがとな。なんかかえって気を遣わせて悪かった」
別に気を遣ったわけではないのに。
私が後輩だから、そう思われてしまうのかな…。
そう思うと何だか急に寂しくなる。
こんなに近くにいるのに、それに一緒に残業したり、大橋さんのプライベートな部分に触れて、少しは近付いたと思えたのに、まだまだこの人との距離は遠い。
「…そんなことないです」
仕方がない…大橋さんはそもそも恋愛はこりごりだ、と言っていて、する気が無いのだから。
そう言い聞かせながら、どこか寂しい気持ちを隠し、精一杯の笑顔を作って、私は答えた。
「…じゃあそろそろ行こうか?最初はパンの美味しいお店だっけ?」
大橋さんの言葉に、私はハッとしながら頷いた。
…そうだ、今日は大橋さんを楽しませたい。
一緒に過ごして、楽しいと思ってもらいたい…。
「はい!オリジナルのパンを使ったパニーニがとても美味しいみたいなんです!クリームソーダも種類がたくさんあるみたいですよ」
私はあえてはしゃいでいるように言った。
「うわ、まじか!それは気になるな…」
「ね?早く行きましょう!」
「そうだな!」
そうして私達は最初のお店へと歩き出した。
***
「お、これうまいな」
注文したてりやきチキンと卵の入ったパニーニを頬張りながら、大橋さんは言った。そんな大橋さんは、パニーニの2個セットのプレートを注文しており、これの後には、生ハムとモッツァレラチーズのパニーニが控えている。
ここの他にもいくつか回るのに、これだけ食べられるのはさすが男性と言うべきか否か…
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