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すると、健さんが私の顎をくいっと引き上げると、そっと唇を重ねた。しばらくして離れた時に見た健さんの表情は、安堵と喜びとか混ざったような状態だった。
「良かった…」
抱き締められながら、耳元でそう囁かれる。
どうやら安心してもらえたようで、私もホッと胸を撫で下ろした。
すると不意に再び耳元で、
「…すごく可愛かった」
と、色気を含んだ声色で囁かれ、身体が思わずビクンと反応してしまった。
そう言えば、まだ何も着ていないのだ。恐らくそのせいもあるのだろう。触れ合っている体温は心地良いけれど、敏感に反応してしまうのは困り物だ。
「あっ…たける、さん…その、服を…」
私は服を着ることを提案しようとしたけれど、健さんは、なぜか「ん?」ととぼける振りをした。
「健さん…風邪、引いちゃいます…」
「風邪引いたら、奈々がまたスポドリとか持ってきてくれて、今度は付きっきりで看病してくれるだろ?」
ニヤリと笑いながら、まさかの発言をする健さんに、私は驚いて言葉が出なくなってしまった。
「せ…仙台にいる間は出来ませんよ…」
私が慌ててそう返すと、健さんは笑いながら、
「奈々が帰ってくるまで風邪は引かないよ」
と言った。
「…私が帰って来ても風邪引かないでください…健さん、ただでさえ忙しいのに、体調を崩さないか心配しているんですから…」
思わずそうツッコミを入れてみたけれど、どういうわけか健さんは嬉しそうにしていた。
「…なんでそんなに嬉しそうにしているんですか?」
こちらは心配しているのに、全く届いていないように思えて、少しムッとしながら私は言った。
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