590人が本棚に入れています
本棚に追加
私が泣いていると、健さんはそっと頭を撫でてくれた。
「…ちゃんと帰って来るの待ってるから。だから、これは先輩として…精一杯頑張って来いよ」
健さんはそう応援してくれた。
でも…
“先輩として…?”
「………彼氏として、は…?」
ふと疑問に思ってしまい、思わず私はしゃくり上げつつも聞いてしまった。
「そこ、聞くか…?」
健さんは苦笑しながら言った。
「…1日も早く帰ってきて欲しいに決まってるだろ。俺、こう見えても結構寂しがり屋なんだからな!」
………。
それを聞いて涙が引っ込んでしまい、プッと吹き出してしまった。
「こら、笑うことないだろ?!」
健さんが私の額を人差し指で軽く小突いた。
「す、すみません…だって寂しがり屋って…ちょっと意外で…」
健さんは私よりも7歳上だ。すごく大人に見えるし、周りにも気を使えて、仕事も出来る人なイメージが強いため、とてもそんな風には見えなかった。
「そりゃ格好悪いから、普段はそんな所見せないようにしているしな。だけど、お前の前でくらい正直にならなくてどうするんだよ…」
つまり、私の前でだけ…。
私だけが、健さんのそういう所を知っている、ということなのだろうか。
…元カノの…沙絵さんの前とかでは見せたことなかったんだろうか…。
何でこういうときに元カノさんの存在がよぎってしまうんだろう…。私は少し落ち込みつつ項垂れた。
「…奈々の考えていること、手に取るように分かるぞ?言っておくけれどな、こんな所、奈々しか見せたことはないからな?本当だぞ!」
健さんは少しムキになりながらそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!