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14.安堵と衝動ー健side―
藤と殿塚と3人で飲んだ日から数日後、タイミング良く仙台への出張が決まった。
これが無かったら、どこかの週末に榎原に会いに行こうと考えていたのだが、突然行って何だと思われることがやはり不安だっただけに、口実が出来たことで少し気が楽になった。
出張を目前に控えたある日。
同行することになった晴美さんに、打ち合わせをするからと、とある会議室に呼び出されていた。
必要な書類と自分のノートパソコンを持って、指定された場所に行くと、晴美さんが何とも言えない表情でこちらを見ていた。
最初は出先での打ち合わせ内容、向こうでの来客など、改めて確認をするという、至って普通の事前打ち合わせだったのだが、一通りそれが終わり、解散するかと思いきや、晴美さんに呼び止められた。
「…で、あんたどうするの?」
どうするの?とは…?
俺は全くその意味が分からず、首を傾げた。
「奈々ちゃんのこと!向こうに行くんだから、ちゃんと時間を作って、話でもしたらどうなの?」
「えっ…?」
突然、榎原の名前を出されて、動揺してしまう。
いや…そもそも夏の終わり頃に榎原の話をして以来、晴美さんに榎原のことを話した記憶がない。藤達にはこの間したけれど…。
「えっ?じゃないわよ。私が気付いていないとでも思った?あんたの先輩を何年やってると思ってるのよ…」
晴美さんは呆れながらそう言った。
どうやら頼れる先輩は、俺の様子を見て色々察したらしかった。
「あからさまになったのは、奈々ちゃんが仙台に行ってからかしら?奈々ちゃんの席、チラチラ見てるんだもの。美織ちゃんどころか、久保くんも気付いていたわよ」
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