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………久保さんにまで気付かれていたとは…。
榎原と初めて食事に行ったときに、久保さんからは色々お店を教えてもらっていた。その後一度だけ、「付き合ってるの?」と聞かれたけれど、そのときは否定したから、それ以降は特に何も聞かれてはいなかった。
久保さん、俺の隣だし、このあと席に戻りにくいな…
「まぁそれはそれとしてね、前にも言ったでしょう?後悔しないようにねって。あんたいつまでヘタれてんのよ…」
………これは説教、だよな…。
しかも仕事のことではないことを会社で。
だけど、俺はそれに関しては言い返せなかった。なぜならば、全くその通りで、否定する要素がなかったからだ。
ただ、それでも今回ばかりは何とかしたいと思っている。そう思うようになったのは、きっと、俺が榎原への想いを自覚したからなんだと思う。
「一応…今回、榎原に時間をもらって、ちゃんと話をするつもりです…」
少し間を空けて、俺がそう言うと、
「え?もう連絡したの?あんたにしては珍しい…」
と、晴美さんは意外そうな顔をしていた。
「いや…連絡はこれからで…」
この時点でまだ俺は、榎原に何も連絡をしていない。
すると今度は、晴美さんは呆れ顔になっていた。
「あんたって子は…」
溜息を吐きながら頭を抱えている先輩。
傍から見ればかなりのお節介なのだが、そのお節介のおかげで俺だけではなく、同期の殿塚も仕事やプライベートで何度も救われているので、邪険には出来ない。
「まぁいいわ。なるべく早いうちに連絡しなさいな。あんたが連絡するなら、私はしないでおくから」
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