14.安堵と衝動ー健side―

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晴美さんはそう言い残し、会議室を先に出て行った。 それからと言うもの、榎原に何と連絡しようかメッセージの文章を考えるけれど、打ち込んでは消し、打ち込んでは消し…の繰り返しだった。 突然メッセージが来たらどう思うだろうか、出張でそちらに行くと言ったらどう思うだろうか、2人で話す時間が欲しいと言ったら時間をくれるだろうか… そんなことばかり考えてしまい、なかなか思うように言葉が出て来なかった。 結局、榎原に連絡出来ないまま、出張当日になった。 晴美さんとは現地集合なので、俺は自宅から直接仙台に向かった。 今日、榎原に会える… 連絡は出来なかったけれど、そう思うと早く会いたくて堪らなくなった。 いや…まずはちゃんと謝って、ちゃんと話して…だよな。 浮かれてしまいそうになる気持ちを抑えつつ、榎原に会ったら何を言おうか、時間を取ってもらう話をどう切り出そうかと考えていた。 一方で、出張直前まで仕事が立て込んでいたこともあり、宿泊先を探せていなかった。しかもクリスマス直前の週末ということもあってか、なかなか空きがなかったため、そちらもどうしようかと悩んでいた。まぁ最悪は漫喫にでも泊まれば問題はないのだが。 昼頃に仙台に着き、昼食を摂った後で晴美さんと合流し、仙台にある支社へと向かった。 いよいよ、榎原に会える…。 そう思っていたのだが、着いて早々、休む間もなく、すぐに会議に入ることとなってしまった。 挨拶くらいはしたかったのにな…と思いながら、指定された部屋へ向かっている途中、通りがかった部屋の片隅に、見覚えのある後ろ姿が見えた。
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