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あぁ…彼女が見えた…。
その瞬間、安堵も感じながら、榎原への想いが溢れそうになった。
俺…こんなに榎原のこと、好きだったんだな…
改めてそう自覚する。
今すぐ駆け寄って榎原の顔が見たいと思ったけれど、グッと堪えた。
会議が終わったらすぐに榎原の元に向かおう。
そして、話す時間が欲しいことを伝えよう。
そう思いながら、俺は頭を切り替えて、会議に臨むことにした。
***
会議の方は少し難航してしまい、終わった頃には定時に近かった。
終了後、すぐに榎原の元へ向かおうとしたけれど、仙台支社にいる知り合いに声を掛けられてしまい、少し立ち話をすることになってしまった。
そうしている間に定時になる。
…榎原が帰るかもしれない。頼む、早く終わってくれ…。
内心焦りながら話をしていたけれど、なかなか終わらない。
しかも相手が目上の立場の人だったから、無碍にも出来ない。
ようやく解放されたときには、既にそれなりの時間が過ぎていた。
もしかしたらもう帰ってしまったかもな…
そんな風に思いながらも、先程榎原を見掛けた部屋に行くと、榎原と晴美さんが楽しそうに会話していた。久しぶりに会って、盛り上がっているのだろう。
そんな2人の邪魔をするのは申し訳ないと思いつつ、俺はあくまで平然を装い、たまたま通りがかったように見せた。
「晴美さん、ここにいたんすか…って、榎原…?」
俺がそう声を掛けると、2人の視線がこちらに向けられる。榎原に至っては、大きく目が見開かれ、まじまじと俺を見ていた。
一方、俺は、久しぶりに見た榎原の顔に少しだけ見惚れていた。
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