14.安堵と衝動ー健side―

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「………嫌じゃ、ないです…」 一瞬、聞き間違いかと思ったが、榎原は真っ直ぐこちらを見ながら言っていた。そこで今のが聞き間違いではないことを確信し、俺は心底ホッとした。 その後、榎原が帰り支度が終わるのをエントランスで待っていた。 「…お待たせしました」 急いでいたのだろうか。少し息を切らせながら言った。 「いや、大丈夫だよ。それじゃ、行こうか」 「はい…」 榎原が少し緊張した面持ちで、俺の隣を歩き始める。 無理もないよな… あんな態度をずっと取り続けていたんだ。 俺は心底榎原に対して、申し訳なく思っていた。 だけどそれでも、久しぶり榎原が俺の隣を歩く光景が、この上無いほど嬉しかった。 またこんな風にこれからも一緒に歩けたら… そんなことを願わずにはいられなかった。 「…榎原は何か食べたいものとかあるか?」 少しでも緊張を和らげようとして、リクエストを聞いてみる。 すると、 「えっと…あ、むしろ大橋さんは食べたいものありますか?折角仙台にいらしてるし、牛タンとかありますけど…」 と、逆に聞き返されてしまった。 俺を気遣ってくれたのだと思うと、嬉しくてつい顔がニヤけてしまう。 「俺に気遣わなくていいよ。今日は榎原の食べたいものにしよう?」 俺がそう言うと、緊張なのか遠慮なのか、小さく「はい…」と答え、その後は全くリクエストが出て来なかった。 さて…どうしたものか…。 ひとまず事前に調べておいた、榎原が好きそうなお店を3つ程ピックアップし、 「じゃあ…こことここと…あと、ここ!この3つならどこに行きたい?」 と、スマホの画面を彼女に見せながら、俺は聞いた。
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