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すると、少し躊躇しつつも、あるお店の画面を指差した。
「あ…えっと、ここが気になります…」
少し遠慮がちに言ったそこは、イタリアンのレストランだった。
俺はすぐに空席を確認するため、その店に電話をしたけれど、空きがないらしい。
「…悪い、今日は予約でいっぱいらしい」
ため息混じりにそう伝えると、
「今日、金曜日ですもんね。クリスマスも近いですし…仕方ないです。他のお店にしましょう?」
と、そんな風に気遣ってくれた。
予定が未定だったため、予約が出来なかったのはあるけれど、それにしてもこの状況は格好悪いよな…と反省した。
こんなことなら躊躇せず、事前にちゃんと榎原に連絡して、約束を取り付けておけばよかったのだ。
「そうだな。一応、両方電話してみるか…」
気を取り直して、候補に挙がっていた残り2つのお店にも電話して聞いてみるものの、どちらも予約でいっぱいという回答だった。
「…悪い、この時期は難しいんだな」
せめて1件くらいは大丈夫だろうとタカを括っていただけに、落胆し、思わず溜息を吐く。
全然スマートに出来なくて情けない。榎原にも格好悪いところを見せてしまった。…いや、格好悪いところはすでに結構見られてしまっているのだが。
そんなことを考えていると、榎原がクスッと笑いながら、
「私もびっくりしました…。あ、この近くにファミレスがあるんですけど、そちらにしますか?」
と、提案してくれた。
確かに今から探すにしても時間が惜しいし、地元出身の榎原の言葉に従っておいたほうがいいかもしれない。
それに、いつまでも寒い中、彼女を歩き回らせるのも良くないだろう。
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