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1.切ない音
4月。
私、榎原 奈々は、新入社員として入社式を迎えていた。
同期は6人。男性3人と女性3人だった。
1人だけ、重役の娘だという同期がおり、それを鼻にかけているというか、私達女性の同期には目もくれず、男性の同期や主に男性の偉い人に媚びている子がいて、その子以外は、比較的仲の良い同期関係だったと思う。
新入社員研修を終え、GW明けに私が配属されたのは企画部だった。
様々な案件を企画立案したり、広告宣伝をしたりする部署らしいが、正直、配属されるまでふわっとしたイメージしかなかった。
私の教育係になった先輩は女性で、今年で入社6年目らしく、入社時から企画部だという人だった。ふわっとした笑顔が似合う優しい先輩で、緊張しっぱなしだった私が早く打ち解けられるよう、こまめに声を掛けてくれたり、部署内の上司や先輩方と話す機会を設けてくれたりと、仕事そのもの以外のフォローもたくさんしてもらった。そのおかげで、配属されて1ヶ月過ぎる頃には、それまで「榎原さん」と呼んでいた先輩が「奈々ちゃん」と呼んでくれるようになり、私も先輩のことをファーストネームで呼んでいた。
「奈々ちゃん、もうだいぶ慣れてきた?」
ある日のランチ時、教育係の先輩…殿塚 美織さんが、声を掛けてくれた。
「美織さんのおかげでかなり慣れてきましたよ!ありがとうございます」
私がそう答えると、美織さんは嬉しそうに笑っていた。
「でも、最初は奈々ちゃん、挨拶で噛んじゃう程、ガチガチに緊張していたよね」
その隣から美織さんの教育係だったらしい、山川 晴美さんが言った。
今はこの3人でランチをすることがほとんどだ。
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