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「晴美さん…そこにはもう触れないでくださいよー!」
配属初日、部署への挨拶で緊張してしまった私は、言葉をしっかり噛んでしまい、恥ずかしい想いをした。晴美さんはそのことをしっかり覚えていて、時々こうしていじってくる。
「まぁまぁ…。奈々ちゃんは緊張しやすいタイプみたいだし、私もプレゼンで噛んだりするから」
美織さんが、晴美さんと私のやり取りにクスクスと笑いながらそうフォローした。
そんな会話をしつつ、昼休みが過ぎていく。
午後も美織さんに1つずつ教えてもらいながら、仕事を進めていった。
ある日。
美織さんと部長と共に役員会議室に呼ばれていった。その間、晴美さんから仕事を教わっていたが、戻ってきた部長の表情が固く、暗かった。そして美織さんが戻って来ない。何があったんだろう?
しばらくして晴美さんが部長に呼ばれていた。それと、美織さんの同期でもある、大橋 健さんも、呼ばれていた。
大橋さんとは、企画部の中では話す機会の少ない先輩だ。いかんせん、いつも自席にいないのだ。様々な案件を抱えているらしく、いつも忙しそうだった。ただ、美織さんとはものすごくウマが合うらしく、2人が組むといわゆる阿吽の呼吸で仕事が進む。今も大橋さんの一部の仕事を、美織さんがフォローしていることもあって、私も仕事を教わりがてら、携わっているけれど、「大橋くんは多分こうするから、◯◯を進めたり、準備しておく」みたいなことが度々あり、大抵の場合、それが合っている。
私は最初、この2人が付き合っているのだと思っていた。でもそういう仲ではなく、むしろ美織さんには、営業部に彼氏がいるとのことだった。
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