1.切ない音

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小森くんの話ではこうだ。 白石さんは営業部に配属された後、営業の有望株である、とある先輩を教育係にするよう父親に懇願し、自分に振り向かせようとしていたらしい。ただ、その先輩には昔から付き合っている彼女がいて、全く見向きもされなかったそうだ。 「そしたらさ…あいつ何したと思う?父親に、先輩の彼女が不正をしたと言って調べさせたらしいぞ?」 先輩の彼女は同じ会社に勤めている。しかも彼女の方が先に入社していて、先輩はたまたまではあったらしいが後から追ってきた形だ。 …ん?あれ? 似たような話をどこかで聞いたような… 「ねぇ、その先輩ってまさか、藤枝さん?」 思い切って私は、小森くんに聞いた。 なぜならば、藤枝 祐人(ふじえだ ゆうと)さんは、私の教育係である美織さんの彼氏である。 小森くんは私の発言に驚いていた。 「榎原なんで…?あ、そうか!藤枝さんの彼女さんって確か…」 企画部だったよな、という言葉は飲み込んでいた。 私は昼間の出来事を思い出す。 さらにあのあと、定時で美織さんは藤枝さんと帰っていった。そのときの2人の表情は、いつもと違って暗かった。 「そう言えば、さっき来る時、エントランスで白石さんが殿塚さんに食って掛かってるの見たよ!少し離れていて、白石さんが何言ってるかははっきり聞こえなかったけど、多分藤枝さんを渡せ的なことだと思う…」 そう言ったのは、海外事業部の清水 陽華(しみず はるか)だった。 「うわっ、そんな人前で?」 ドン引きしていたのは、経理部の加賀美 翔馬(かがみ しょうま)。 「いや、あいつならやりかねないだろ…“愛菜の方がずっと良い女なんだから”とか言ってそうだし…」
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