1.切ない音

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その後、白石さんのことも話していたが、いつの間にか美織さんが実はモテているのに、本人が気が付いていない話や、それを知った藤枝さんが美織さんの知らないところで牽制をしまくっている話をした。さらには、今どういう仕事をしているか、など、話題は尽きなかった。 *** 22時過ぎ。 ようやく同期会は解散となった。 飲み会をしていたエリアには、いくつも駅があり、私は一人だけ方向が違ったため、心配されながらも一人で目的の駅へと向かっていた。 無事に駅に着き、ホッとしながら地下鉄の階段を降りていると、見覚えのある後ろ姿があった。 あれは… 「お、…大橋、さん…?」 美織さんと同期の大橋さんだ。 大橋さんは私の声に気が付いて、振り返った。 「あれ?えっと…榎原、だったよな?ごめん、なかなか席にいないから、ちゃんと覚えていなくて…」 大橋さんは謝りながら、どこか疲れている風だった。 「あ、いえ…大橋さんはお忙しいですし、私は大丈夫ですから」 私がそう答えると、 「いや、それは人として良くないだろ」 と、大橋さんは少し怒ったように言った。 「す、すみません…」 慌てて私は頭を下げて謝った。すると、ハッとしたような表情をしたかと思ったら、今度は大橋さんが慌てていた。 「あ、いや、ごめん。こっちもつい、口調がキツくなって…」 「い、いえ…大丈夫です…」 その後、大橋さんと方向が同じだと分かり、途中まで一緒に帰ることになった。 …が、気まずい。 とても気まずい。 同じ部署だけれど、普段大橋さんが席にいないことが多いこともあり、今まできちんと話したことがなかった。 何を話したらいいか、さっぱり分からない。
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