587人が本棚に入れています
本棚に追加
大橋さんもそうなのだろうか。
こちらに全く話しかけてこない。
一緒に帰ることになったにも関わらず、沈黙がとても辛かった。
こういう時は、やっぱり後輩の私から話し掛けなくちゃだめだよね…。
どうしよう…。
ひとまず、当たり障りの無さそうなことから聞いてみることにした。
「お、…大橋さんは、いつもこんなに遅くまでお仕事されているんですか?」
すると大橋さんは、
「いや…そんなことはないんだけど、今日は急ぎの案件があったから…」
と、答えてくれた。
「そうだったんですね…お疲れ様です」
急ぎの案件…晴美さんもそんなこと言ってたな…。もしかして、大橋さんも美織さんのことで絡んでいたりするんだろうか?
そんなことを思っていると、うっかり自分が会話を終了させてしまったことに気付き、またしても沈黙が流れてしまっていることに気が付いた。
やってしまった…
親しい人はともかく、慣れていない人との会話を広げることはやはり難しい。
何を話題にしたら良いだろうか…
きっと今日のことを聞いたとしても、新人の私にはまだ詳しいことは教えてもらえないだろうし…。
もっと、何か世間話みたいな…。
そんな風に思い悩んでいると、大橋さんが声を掛けてきた。
「榎原こそ、こんな時間にどうしたんだ?残業はしてなかったよな?」
「え?」
突然話し掛けられて、素っ頓狂な声が出てしまった。
「あ、いえ…同期と飲んでたんです」
慌てて、私はそう答えた。
「へぇ…榎原の同期って、誰がいるんだっけ?」
大橋さんは更に話を広げてくれた。
私はそれが少し嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!