宣言屋さん

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「なんですか。雲井さんと話してる途中だったのに」 「だからだよ。お前、治りかけた傷口をこじ開けるような真似するなよな」 「どういうことです」 「……そうか、お前は日が浅いから知らないのか」  虹川さんは周りに人がいないか確認した上で、そっとわたしに耳打ちした。 「去年、雲井はしくじったんだよ。梅雨入り宣言したものの、一週間以上雨が降らなくてな。元々口数の少ない男だから、職場の誰も触れられずにいたんだが」  虹川さんが何を言わんとしているのか、なんとなく察しがついてきた。 「お前だったら、〝梅雨入り早かったんじゃね?〟で済むが、真面目な雲井の場合はそうもいかんだろ。完全に腫れ物扱いみたいになってな。あれは地獄だったぞ。しばらく職場が凍り付いていたからな」  想像してみたが、思わずわたしまで身震いしてしまう。   「で、結局雨は降ったんですか」 「一応、宣言十日後にやっと小雨が降ったが、そこからまた一週間快晴だ」 「うわあ」  そんな事態になったら、わたしは当面SNS関連は覗けなくなるだろう。何を言われるかわかったものではない。 「あの、虹川さん。わたし、どうしたらいいですかね」 「別に、お前は深刻に考えなくていいだろ。後で訂正すればいいんだし」 「わたしだけ扱いが雑じゃないですか」 「前の係、文句言って抜けてきたんだろ? お前は雲井と違って、鋼のハートの持ち主だと踏んでるけど」 「失礼なっ。か弱い乙女を捕まえて、なんちゅう暴言を」 「いや、もう、その反応でわかるわ」
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