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「大阪に行ってから全然連絡しなくてごめん」
「大学生活が忙しかったんでしょ?そういう子他にもいたし気にしてないよ」美々は反射的に上手くまとめようとしてくれる。頼れる存在である。
「そうじゃないの…」
「そりゃ成人式にも来なかったときは心配したけど。ねえ?」
いちいち静香に相槌を求めるが静香は遠い目をしたまま何も言わない。
「えっと…大学に入ってすぐ体調を崩して」
それは静香が成人式のあと紘子の実家に電話して母親から聞いていたのと同じだった。なんの病気かは聞けなかった。もしかしたらもう二度と会えないんじゃないかと少し怖かった。
「今は良くなったの?」
「あ、うん。こっち戻ってきてやっとここ半年ぐらいね。地元に戻った方がいいと思って1年前にこっちで就職したんだ」
「実は戻って来たばかりのころね、今日みたいに街で静香と美々を偶然見かけたの。卒業以来何年も連絡も絶ってて、いきなり声とかかけづらいからそのまますれ違ったんだけど、やっぱり気付いてもらえなかった。なんか、透明人間になったみたいな気がした」
「そうだったの?だってまさかヒロがこっちにいるなんて思ってもいなかったから。ねえ?」
相槌を求めても無駄だ。
静香は美々とは別の位置から紘子を見ていた。
「何年もの間、もうどうにも出来ない、この先一生このままなんだ…と思って諦めてたんだけど、やっぱり二人に会いたいって…また前みたいに会いたいって思って…会えるように頑張ろうと思って…今日も私のこと気付かないかもって不安だった」
「あたしたちがヒロのこと忘れるわけないし、すぐ電話でもかけてきてくれればよかったのに」
ここで、パフェを注文して以来初めて静香が口を開く。
「ヒロの言う一年前のことは確かにまったく覚えがないけど、わたし半年前に駅でヒロを見たよ」
「えっ!」紘子が狼狽した。
「秋の連休の初日だったかな。ヒロは電話で話しながら急いで歩いていたから…声を掛けなかったんだけど」静香も何かを誤魔化すように歯切れが悪かった。
「半年前?…私のこと静香ちゃん分かったの?」「分かるに決まってるじゃん!」
ちょっと嘘なので怒ったような声でかぶせ気味にごまかす静香。
「え?聞いてないよ。何で黙ってたの?静香」美々も狼狽える。
「ヒロが自分から話してくれるのを待ってたの!」
強めに言ったが正直なところ静香は自信がなかったのだ。
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