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少し肌寒い春の、日曜日の昼下がり。
高校からの友人同士の静香と美々が大通りを歩いていると、10メートル先からこちらに手を振る女性がいた。二人は数秒の間、自分たちにバツの悪そうな弱弱しい笑顔を向ける女性を凝視する。
二人がそうした理由にはそれぞれ少しの違いがあった。
「ヒロ?」美々が先に答えを発する。
「うん」
その女性、紘子はますます弱弱しく笑った。
「えー久しぶり!卒業してからだから…すごい久しぶりじゃん!」
「五年、かな」
「こんなところで偶然会えるとは思わなかったー!ねえ静香?」
静香はまだいぶかしげな顔をしている。
「静香ちゃん。久しぶり。わからないかもしれないけど、紘子です」
「ヒロ痩せた?」
静香が驚いたように言うので改めて紘子を全身眺めた美々は「ええ?全然変わってないよお」
「あ高校の時からは10キロぐらい太ってるけど…」今度は紘子がいぶかしげに答えた。
美々は不穏な空気はスルーする主義である。
「ああ。どっちかっていうとちょっとふっくらしたね。なになに?帰省中?今も向こうにいるんだよね?てかひとり?時間あったらどっかで三人でお茶しようよお」
いつもこうだった。三人でいると美々が八割喋ってた。それを思い出して紘子と静香は顔を見合わせてやっとあの頃のように笑った。
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