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生まれた時から、雨に祟られていた。
破水の連絡を受けた父親が職場から病院へ向かう途中、突如発生した集中豪雨により電車は全線ストップ。立ち会い出産を望んでいた母親は孤軍奮闘せざるを得なかった。
もちろん病院から家に戻る日も雨。それどころか中学生になった今に至るまで、行事という行事はことごとく雨で、ついたあだ名は「雨女」
それでも小さな村のおおらかさが幸いしてか、いじめられることはなかったし、農家の人たちからは雨の恵みをもたらすとして、逆に拝まれたりもした。
でも、私はこの体質が嫌だった。どこに行くにも傘がいるし、屋外で楽しむ遊びなんてもっての外。物心ついてからは、みんなの迷惑にならないよう、ずっと屋内にいたから、夏になっても私の腕は白いままだ。
一度でいいから、青く晴れ渡った空の下で思いっきり遊んでみたい。
それが幼い頃からの夢だった。
「さあ、どうする? 後は君の決断次第だよ」
だから、つけ込まれたのだ。
目の前でニヤニヤと笑う、この男に。
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