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沙紀は、思わずラジオのボリュームを上げた。このところ調子悪かった誠人がなんとホームランを打ったのだ。
『江村選手、スタンドに向けて高々と拳を突き上げました!』
『久々の大きな一発ですからね。お客さんもですけど、本人も相当うれしいんじゃないですか?』
『このまま天気がもてばいいんですが。急に空が暗くなってきました。雨が降って、5回を待たずに試合中止なんてなれば、このホームランも幻になってしまいますからね』
車のフロントガラスに、ポツポツと雨があたり始めている。
沙紀は、あわてたようにUターンをした。そして、出来る限りスピードを上げた。
ラジオでは、少々雨がパラついたものの、試合が中断するほどのことでもなく、順調に試合が進んでいた。
再び市内に戻ると、さきほどの雨で道路にできた水溜まりで楽しそうに遊ぶ子供たちの姿が目に入った。
こうやって喜ぶ人もいるんだから、『雨女』でもいいか。
沙紀はそう思いながら、会社に向けて車を走らせていた。
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