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「……ほかに好きな人でもできた?」
すらりと背が高く、精悍な顔つきの誠人は、結構女性にモテる。
「そんなんじゃないよ」
誠人はあきれたように笑って否定した。
「じゃあ、どうして?」
「なんていうかさ、聞いちゃったんだよ。沙紀、おまえの正体」
「正体? なにそれ」
「おまえ、『雨女』なんだろ?」
沙紀の髪から雨水がぽたんぽたんと落ちる。沙紀は玄関に立ったまま、いたって真面目な誠人の顔をポカンとした表情で見た。
沙紀はどうしてバレてしまったのかと考えていた。地元の友達はこの辺にはいないはずだ。いやでも、いまの世の中、いつどこでどうつながるかなんて、わからない。
実は、沙紀は幼い頃から『雨女』として有名だった。
幼稚園の頃も、親と出かけるときはわりと雨にあたることが多かった。
小学生になると、学校としての行事が多くなり、そのたびに雨が降るので、いつの間にか「沙紀ちゃんは雨女」とからかわれるようになった。
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