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中学生になってもそれを証明してしまうような出来事が続いた。おかげで、友人たちが、遊園地とか海とか、雨が降ってほしくない場所に遊びにいくときは、沙紀に内緒で行ってしまうこともあった。ショッピングや図書館なんかは一緒に行っていたし、いじめというわけではなかったのだが、なんだかんだあとで事実を知ってしまって、密かに傷ついたものだった。
大人になり、相変わらずかなりの確率で雨を降らせていた沙紀だったが、さすがに『雨女』とからかわれることはほとんどなくなっていた。
地元を離れ、大学卒業後に就職したのは、小さな映像制作会社だった。沙紀は主に編集作業を担当していたが、たまに社長に撮影に連れ出されることがあった。沙紀が『雨女』だということに気付いた社長が、「雨」が必要な撮影のときに沙紀を連れて行くようになったのだ。いまでは、リアルな「雨」の撮影にかけては、沙紀の会社が業界随一という評判だ。まさか『雨女』が役立つとは思ってもみなかった沙紀は、ただただうれしかった。
その「雨」の撮影で出会ったのが、地方リーグでプレーする野球選手の誠人だった。
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